ビッグイシュー382号にびっくりする記事が載っていました(↓)
バンクーバー市がホテルを1ドルで買い上げたという記事です。
いくら老朽化しているとはいえ、ホテルを1ドルで買い上げることなんてできるんだろうか。
一体どんな事情があったのか?
所有者は納得しているのか?
空き家だったのか?
などなど、色々と気になるばかりの記事だったので紹介します。
目次
カナダ・バンクーバーは北米で最も路上生活者が多い街
カナダは福祉政策がしっかりしている国というイメージがあったんですが、意外にも北米で最も路上生活者が多い街の一つなんだとか。
上の図のように、バンクーバー以外の都市にも数千人の路上生活者がいます。
近年のバンクーバー市内には中所得者向けのマンションや店が立ち並び、低所得者は路上生活もしくはボロボロの格安ホテルに宿泊しています。
問題なのは、低所得者向けの老朽化したホテルは補修などの維持管理もろくに行われていないことです。
老朽化したホテルにしか泊まれないような低所得者は経済的に困窮していて選択肢がない
↓
ボロボロのホテルでも泊まるしかない
↓
ボロボロでも客が入るのでオーナーは補修費にお金をかけない
↓
ホテルの老朽化がさらに進む
こんな悪循環に陥っています。
格安ホテルの中には深刻な老朽化によって倒壊の危険が出ているものもあります。
入り口に書かれた落書きも消されないほどの荒れようです(↓)
さすがにここまでボロボロだと利用者も苦情を言うと思いきや、オーナーに「文句をいうなら出ていけ」と言われるのが怖くて何も言えないのが実情、、、
ホテルの利用者以外(つまり中所得者以上の人や活動家)がバンクーバー市に苦情を言うしかないという状態でした。
老朽化したホテルを市が1ドルで買い上げて福祉施設に改築するらしい
活動家やホテルの周囲に住む人などからバンクーバー市にホテルの壊れそうで怖いといった相談が寄せられても市は所有者に注意するだけというのがこれまでの対応でした。
市の権限で強制的に修繕をさせたり、営業権を停止するといったことはしていなかったようです。 (権限はあるけどやらなかったのか、それとも権限がなかったのかは分かりません)
しかし2019年11月にバンクーバー市は2つのホテルをなんとたったの1ドルで買い上げました。
買い上げられたホテルの外観(↓)
実は買い上げられた2つのホテルのオーナーは同一人物(一族)なので、オーナーはホテルを売って2ドルしかもらえなかったわけです笑
当然、オーナーはこの金額に抗議しています。
格安ホテルとはいえ1ヶ月の家賃は数万円、300人ほどが入居していたので少なく見積もっても1ヶ月で600万円くらいの売上がなくなったはずですからね。
でもそんな破格で強制的に買い上げられてしまうということは、これまでに何度もバンクーバー市から改善指示を受けてそれを無視していたはず。
記事によると30年以上もボロボロのまま営業を続けていたようです。
これまで放置していた市の責任もあるかもしれませんが、オーナーの自業自得という面が大きいと思います。
強制的に買い上げられるのが嫌なので格安ホテルの修繕が進むはず
実は、ホテルの所有者は裁判を起こしています。
「1ドルは安すぎるから値段を見直せ」という趣旨の訴えです。
ということで強制買い上げ作業は完全には決着していません。
ただバンクーバー市としては価格が多少変わったところで痛手ではないはず。
そして何よりも大事な点は、強制買い上げに動いた時点で、他の格安ホテル管理者に対して「ちゃんと保守管理しないとお前のホテルも買い上げるぞ」という姿勢を示せた点です。
価格がどうなるかというのはあまり重要な要素ではないですよね。
バンクーバー市内の全ての老朽化した格安ホテルを買い上げて福祉施設に改修し運営するなんてことはできません。
きっと今回の買い上げ騒動は市からホテル所有者への見せしめ、具体的に行動を起こさせるきっかけという意味合いが強いんだと思います。
日本にも放置されたホテルや空き家がたくさんあるので、公的機関が強制的に買い上げて公共施設に改修するという政策を積極的にやってほしいです。
コロナウイルスの感染拡大によって経済が冷え込んでいる今、インフラ投資は格好の起爆剤になると思います。
少なくともやらないよりは絶対いいはず!
ビッグイシューを売っている場所やその他の詳しい情報は公式ホームページから確認できます。また、ビッグイシュー基金を通して寄付を行うことも可能です。興味のある方は以下の公式サイトを確認してみください。