ビッグイシュー377号の特集は「考える動物たち」
動物にも人間と同じような感情や心はあるのかということを真剣に研究している人たちの面白い話満載の回でした。
猫や犬などに心がありそうだということは容易に想像がつきますが、トカゲやハエならどうでしょう?
うーん。トカゲはありそうだけどハエはちょっと、、、
たぶんこんな感じになると思います(笑)
そこで今回の特集「考える動物たち」で、動物心理学について簡単に紹介していきますね。
目次
かつて心理学は「動物心理学」を指す言葉だった

出典:ビッグイシュー377号誌面
心理学とはどんな学問ですか?
こう質問されたらほとんどの人が
「人間」の精神、行動を研究する学問
と答えると思います。
心理テストを利用した企業の採用試験や心理トリックを応用したバラエティ番組などがたくさんあるので「心理学=人間を研究する学問」というイメージが定着したんだと思います。
しかしかつて心理学といえば「動物」を研究する学問(動物心理学)でした。
動物心理学の起源は1859年にダーウィンが出版した種の起源まで遡ります。(ダーウィンの種の起源は一体人類にどれほどの影響を与えたんだろうかってくらいよく聞きますね笑)
人間は動物の言葉を理解できないので研究のしようがないのでは?と思ってしまいます。
しかし研究者に言わせると、言葉を話さないから研究しやすいんだそうです。
確かに人間相手に研究していると建前や見栄(要は嘘つき)を完全に排除できないので難しい面もあるんでしょうね。
また人間の環境をコントロールすることは難しい一方で、動物の環境を研究に合わせてコントロールするのは難しくないというメリットもあるようです。
例えば「人間の赤ん坊を生まれてからすぐに母親から離して外界と関わりを持たせないように3歳まで育てる」なんて倫理的に無理です。
しかし動物ならできます。
ハエなどの世代交代の早い動物を利用すれば、より簡単に個体ごとの環境操作ができてしまいます。
動物の心を研究するのは難しそうに見えて、実は人間よりもやりやすい面があるという点は意外でした。
動物も人間もギャンブル依存症になるメカニズムは同じ
動物は言葉を話さないため、何を考えているのか聞くことができません。
そこで「ある一定の条件を与えると動物がどのように行動するのか」を観察する研究(実験的観察法)が盛んに行われています。
例えば、以下の写真のようにレバーを引くと餌が出る装置を2種類用意します。

出典:同上
左のレバーは、20回レバーを引くと1回エサが出ます。
右のレバーは、レバーを引く回数とエサが出るタイミングの規則性はなく、ランダムにエサが出てきます。
このような条件のもとでラットにレバーを引かせると、面白い結果が出ました。
規則性のあるレバーを引いたラットはエサが出てきた後に少し休憩するのに対し、ランダムのレバーを引いたラットは休むことなくずっとレバーを引き続けたんです。
規則性がない、ランダムなのでいつ報酬がもらえるかわからない場合にレバーを引き続けてしまう状態は人間がギャンブルにハマる状態と同じです。
いつ勝てるかわからないけど買ったら気持ちいいから勝てるまでお金を賭け続ける、、、
その結果どうなってしまうのかについては世界最高の福祉国家デンマークでギャンブル依存症が社会問題になっていることを紹介した記事で詳しく書きました。
人間がギャンブルにハマってしまう精神構造はラットと同じです
こんなことを言われるとちょっとショックですが、そこから分かることもあります。
それはラットと人間の脳の基本的な構造は同じなんだということです。
脳の三位一体説(爬虫類脳や哺乳類脳)は古い考え方
心理学関連の本を少し読んでみると、人間の脳は爬虫類脳(感情・欲望)と哺乳類脳(理性)に分かれていると書かれているものに出会うことが多いです。
食べたい、寝たい、セックスしたいなどの生理的な欲求は生物としての本能を司る爬虫類脳からの原始的な命令だから逆らうのが難しい。
理性を司る哺乳類脳が欲求を抑えて、明日以降の食事を考えて食べる量を減らすなどの理性的な行動を起こさせている。
こんなことが書いてあります。
これは20世紀半ばにアメリカのポール・マクリーンが唱えた脳の三位一体説を元にしているものです。

出典:同上
しかし最近の研究で三位一体説は否定されました。
実は魚類、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類の基本的な脳の構造は全て同じなんだそうです。
つまり鳥類なども大脳新皮質(かつて哺乳類脳と呼ばれていた部分)を持っているということです。

出典:同上
するとどうなるか、、、
そう、動物にも心や感情があるということになります。
だって脳の構造が同じなんですから、我々人間にあるものは多かれ少なかれ他の動物にもありますよね。
僕は猫を飼っていますが、彼らには間違いなく感情があります。
もともと哺乳類なのでイメージしやすいね。
でもトカゲなどの爬虫類、金魚などの魚類にも感情があるということはあまり考えたことがなかったです。
トカゲの脳は小さいから人間や猫のような感情は持っていないという話を聞いたことがありますが、きっと脳の大きさと感情・理性には本質的な違いはないんだと思います。
もし大きさが脳の進化と関係あるならクジラが最強の天才でハエは馬鹿ということになってしまいますが、実際にはそれぞれの強み・弱みがあるだけで優劣はないですよね。
いやー、人間とそれ以外の動物の脳の基本構造が同じという話にはロマンがありますね。
さらに研究が進めばドクタードリトルのように動物と会話できる時代が来るのかもしれません。
もし本当にそんな技術が確立されたら世界はどうなってしまうんでしょうね。
地震の予知とか深海の冒険とかできるようになるかなあ。
動物が何を考えているのか、現在の動物心理学の研究成果などに興味がある方は今回の特集で紹介されていた以下の書籍を読んでみてください。
タイトルはそのまま「動物たちは何を考えている?」です(笑)
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