【ビッグイシュー378号】イタリアではホームレスが公的不動産を不法占拠して生活することが認められつつあるらしい

ビッグイシュー378号

日本の人口減少によって空き家問題が深刻化してきました。

放置された空き家を行政処分で撤去する様子を報道するテレビ番組もたまに目にしますね。

そういった報道を聞くといつもこう思います。

 

「空き家があるならホームレスに無料や格安で貸せばいいのに」

 

でもそう簡単に問題は解決できません。

実際には権利者ごとに事情が異なり、ホームレスに貸さずに空き家のままにしておいた方が都合がいいというケースが多いようです。

そこで、空き家とホームレスの問題を同時に解決する方法はないかなあと思っていたら、ビッグイシュー378号に面白い記事が載っているのを見つけました。

 

「ホームレスが空き家を不法占拠する」という大胆な方法です(笑)

 

かなりぶっ飛んだ発想ですが、調べてみると日本でもうまくいくかもしれないと思ったので紹介します。

 

イタリアの世界遺産ベネチアは観光客過剰で土地価格が高騰している

世界で最も多くの観光客が集まるイタリアは名実ともに世界最大の観光大国です。

特に、街全体が世界遺産に認定されているベネチア(またはヴェネツィア、ベニス)は水の都とも呼ばれる超人気の観光地です。

 

しかし「観光客に人気=商売繁盛で住民も幸せ」とはなりません。

 

観光客がたくさん来るということはそれだけホテルやレストランの需要が高いということです。

需要が高いと値段が高くても売れるので、あらゆるものが値上がりします。

いわゆる観光地価格ってやつですね。

 

この観光地価格は土地の値段にも反映されるのでベネチアの地価はどんどん上がっていて、近年、値上がりしたアパートの家賃を払えなくなる人が増えているようです。

もちろんアパートの家賃が払えなければ家を失うので、中にはそのままホームレスになってしまう人もいます。

ベネチア全体で地価が高騰していて安価な引っ越し先を見つけられないのだと思います。

 

そこでイタリアでは「空き家を不法占拠する」ホームレスが出てきました。

 

【ASC主導】公的不動産の空き家を修繕してホームレスに提供

Assemblea Sociale per la(ASC)という市民団体は立ち退きを命じられた住民と大家の間に入って猶予期間の交渉をしたり、空き家を紹介したりといった活動をしている団体です。

しかし紹介できる空き家の数には限りがあるため苦肉の策としてスクウォット(不法占拠)を始めました。

何年も放置されている公的不動産の空き家をホームレスに紹介し、必要であれば修繕も手伝ってからそこに住んでもらうという活動です。

ビッグイシュー378号

出典:ビッグイシュー378号誌面

 

スクウォットは日本語で不法占拠という意味なのでもちろん違法ですが、イタリア政府も黙認しているようです。

空き家は放置しているとどんどん劣化していきますし、良くない集まりに利用される可能性もあります。

不法占拠という形ですが、住民がいてくれた方が助かるという内情があるのだと思います。

(でも公式に不法占拠を認めることはできないので黙認という形ですね)

 

もちろん住まわせてもらっている住民は責任を持って管理しているし、以下の通りの最低限の費用を払っているので黙認しているという面もあるはずです。

 

  • 使用した分の水道光熱費を支払うこと
  • 一定額の家賃を納めること(10〜30ユーロ/月)

 

一定額の家賃として毎月数千円を支払っている理由は、何かあった際にある程度の法的保護を得るためだそうです。

不法占拠している住民が政府にお金を払うというのもおかしな話なので、ASC経由で政府に家賃を納める仕組みがあるんでしょうね。

 

個人所有の空き家ではなく公的不動産の空き家を紹介するのがポイント

日本国内で空き家をホームレスに貸せばいいという話題になると、それは使われていない個人所有の戸建てを貸し出すという意味になると思います。

でも個人所有の空き家の貸し出しには様々な問題や事情が絡んできます。

 

例えば、

  • 知らない人には貸したくない
  • 年に何度か利用する機会がある
  • 近隣住民とトラブルにならないか不安
  • 家賃を下げれば借りる人はいるのでホームレスに貸す必要はない

 

きっと他にもあるでしょう。

でも一番厄介な課題は「個人所有の空き家は所有者の数だけ事情が異なるので対応が複雑になる」ということです。

この点、イタリアのASCは公的不動産に限って活動しています。

つまり交渉の相手は複数の大家ではなく「イタリア政府」だけです。

 

また地価高騰によるホームレス住民増加の一端はイタリア政府の観光政策にもあり、立ち退きを強く要請できないという面もあるはずです。

ホームレスだからといって税金を全く払っていないわけではないし、毎月数千円のみなし家賃を支払っていることも立ち退きを要請されない理由になっているんだと思います。

考えれば考えるほど、ASCが公的不動産の空き家にターゲットを絞っている点に納得させられます。

 

日本に公的不動産の空き家がどの程度あるのかは分かりません。

でもこの方法を日本のホームレスのために応用できる余地は十分になると思いませんか?

 

ビッグイシューを売っている場所やその他の詳しい情報は公式ホームページから確認できます。また、ビッグイシュー基金を通して寄付を行うことも可能です。興味のある方は以下の公式サイトを確認してみください。

ビッグイシューホームページ

ビッグイシュー基金ホームページ

 

周登
最後まで読んでいただきありがとうございました!

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