【ビッグイシュー386号】日本の食卓から在来種が消えるかも!国際社会の潮流と逆行するのはなぜだろう?

ビッグイシュー386号

地球上の種子がどんどん絶滅している話はこのブログで何度か取り上げました(↓)

ビッグイシューは本当に幅広い話題を取り扱ってくれるので読んでいて面白いのですが、この種子に関する記事は特に面白くて勉強になります。地球環境を保護しようという声は至る所であがっていますが、種子を守ろうという声は聞こえてこないんですよね。

でもこのまま対策を取らなければ、地球環境が壊れるよりもだいぶ早く、種子が絶滅して人間も死にます。

そこで国際社会は種子を保護する法律を制定したり、これから作ろうとしています。しかし日本はまったく逆の動きをしていて本当に不思議です。食料自給率の低下が課題であると指摘され続けていますが、いまだに解決に向かう様子はないようです。

ビッグイシュー386号に、日本の種子の現状についてわかりやすい記事が載っていたので紹介します。

世界の種苗市場の約7割が4つの企業に独占されている

世界中で数え切れないほどの作物が生産され食べられていますが、実はそのほとんどはたった4社が提供する種子からつくられています。

  • バイエル
  • コルテバ
  • シンジェンタ
  • リマグラン

正直なところ、ひとつも聞いたことがありませんでした。でも調べてみるとこの4社(通称:バイオメジャー)だけで世界中の種苗市場をほぼ独占していることがわかります。

でも世界中の多種多様な種子をたった4社だけで独占できるものなんでしょうか?

冒頭で紹介したスヴァールバル種子保管庫にある小麦の種子だけで15万種もあるんです。そんな多様な種子を4社だけで生育して毎年安定的に供給するなんてできるわけないですよね?

だからバイオメジャーは世界中の種子を意図的に絶滅させているんです。

その土地の種子を絶滅させれば、農家は毎年バイオメジャーから種子を買うしかありません。一年目に種子を買って、二年目は一年目に育てた作物からとれた種(自家増殖した種)を植えればいいじゃないかと思いますが、バイオメジャーはそんなに甘くありません。

自家栽培した種を育てると味も形も悪くなるように品種改良してあるんです!

そもそも自家増殖が法律で禁じられていることもありますが、仮に禁じられていなくても、売り物にならない作物しか育たない種子なんて使えません。一度バイオメジャーから種子を買ってしまうと半永久的に種子を買い続けなければいけない無限ループにハマります。そして世界中の野菜の種子の94%は消滅してしまいました、、、

これはまずいということで国際社会はその土地に代々受け継がれてきた種子(在来種)を保護する方向に動いています。全世界の農家が同じ種子を育てると、その種子をダメにする疫病が流行った際に全滅します。多様性の保護は本当に大切なんです。

でも日本はなぜか国際社会の流れに逆行し、種子の多様性を破壊する方向に舵を切っています。あまり話題になっていないですが、このままでは10年後、20年後の日本の食卓は壊滅的なダメージを受けるかもしれません。

種苗法の改正により、自家栽培が許諾性(有料)になる

今回の国会では見送られましたが、近いうちに種苗法が改正されます。何が変わるかというと、これまで自由に行っていた種子の自家増殖が許諾制になります。

これまでは一度種子を買い、自家増殖で自分で種子を増やして作物を作ることができました。しかし許諾制になるので、自家増殖するたびに許諾料を払う必要があります。

許諾の対象は種苗法上で登録されている品種だけなので、未登録の品種を自由に自家増殖できることは変わりません。農林水産省は「自由に自家増殖できなくなる品種は全体の10%ほどで、90%近くはこれまでと同様に自家増殖できるので心配いりません」と言っています。

確かに全体で見れば10%程度なんでしょう。でも実際に農家が栽培している主力級の品種の6割以上は登録品種だという点が問題です。つまり半分以上の品種は許諾料がかかるんです。都道府県や品種ごとにみると9割以上が登録品種という作物もあり、影響は決して小さくありません。

出典:ビッグイシュー386号誌面
出典:同上

種子法を廃止して種子ビジネスの活性化を促すと多様性は消滅する

2018年に主要農作物種子法(以下、種子法)が廃止された際に、新しく作られた法律があります。それが農業競争力強化支援法です。

これまで国が保護してきた農業を民間に開放して競争させることで、品質を高めながら価格も抑えていこうという趣旨のもと制定された法律です。確かに、一般的に考えると、民営化により質と価格は向上していきます。

でもあらゆる分野において民営化は有効なのでしょうか?

もちろん答えは「No」です。ものによっては民営化することにより状況が悪化するものもあるんです。例えば、とある国で水道事業を民営化した結果、水質が悪化して水が飲めなくなりました。ゴミ処理を民営化した結果、ゴミが適切に収集されなくなった国もあります。郵便を民営化した結果、郵便料金が数倍に跳ね上がった国もありました。結局、莫大な費用を払い、再び公営化することになったそうです。

民営化は諸刃の剣です。高品質な商品を低価格で利用できるようになるかと思いきや、低品質な商品を高価格で利用せざるを得ない状況になることもあるわけです。

種苗の民営化は日本の将来にどんな影響を与えるでしょうか?

おそらく高品質な種子を低価格で利用できるようになります。でも利用できる種子はたったの数種類ということになるでしょう。

なぜなら、バイオメジャーが世界中でやっているように、特定の売れる種子だけを大量に販売したほうが利益が大きくなるからです。多様な種子を作ってもコストが増えるだけで売上には貢献しません。

そもそも農業競争力強化支援法は、TPPを受けて外国資本が日本の農業に入れるようにするために作った法律という面があります。つまり制定当初から日本国内の種子や農家を守るつもりがありません。

国際社会がその国、土地の種子を守る方向に舵を切る中、まったく逆の方向に動いている日本の未来はどうなってしまうのか?

10年後、20年後には日本の食卓から日本の在来種が姿を消してしまうかもしれませんね。もしくは、気がついていないだけですでに食卓の大部分は外国由来の種子なのかも。

ビッグイシューを売っている場所やその他の詳しい情報は公式ホームページから確認できます。また、ビッグイシュー基金を通して寄付を行うことも可能です。興味のある方は以下の公式サイトを確認してみください。

ビッグイシューホームページ

ビッグイシュー基金ホームページ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA