一時期ニュースで話題になったので「マケドニア」という国名または地名を聞いたことがある方は多いと思います。でもかつてマケドニアと呼ばれていた国はすでに存在しておらず「北マケドニア共和国」に改名されたことまで覚えている人はあまりいないかも。
(マケドニア問題の詳細 → マケドニア、「北マケドニア共和国」に改名へ ギリシャとの国名論争決着目指す(BBCニュース))
ビッグイシュー387号にはその北マケドニアで実践されている面白い取り組み、薬物依存症の治療方法が掲載されていました。
「治療施設の中にリサイクルショップを併設し、依存症患者が修理したリサイクル品を販売する」という方法です。
売上は治療施設の運営費に使えるし、壊れた家具などを施設に持ち込む人との交流を通じて依存症も緩和される。廃棄物も減らせる。また施設を出た後は身に付けた修理技術を使って就職することもできるという素晴らしいプログラムです。(もちろんそれ以外の職につく人もいますが、選択肢が広がるだけでとても大きな効果があります)
ぜひ日本でもやってほしい。でもそもそも知っている人が少ないはずなので、今回の記事で簡単に概要を紹介しておきますね。
依存症治療施設「レト・ホープ」とは?
レト・ホープは2008年に北マケドニアで開設された依存症患者の治療・回復施設です。依存症患者の治療施設と聞くと、病院や老人ホームのような場所を連想してしまうのですが、レト・ホープは一味違います。
冒頭で簡単に紹介した通り、レト・ホープの中にはリサイクルショップが併設されています。そしてそのショップ内に並ぶ商品は依存症患者が修理した作品です(↓)
依存症患者の回復施設に行ったことがある人は少ないですよね。自分や近しい人がかつて依存症だったか、もしくは自分が施設内で働いていたか、そういった依存症と何らかの関わりを持った人くらいしか回復施設には行かないはずです。
でもレト・ホープには頻繁に地域住民が訪れます。なぜなら壊れたもの(家具など)を持ち込んだり、リサイクル品を買ったりするからです。また、入所者が地域住民の御用聞きをして、草刈りや薪割り、掃除を手伝ったりすることもあるため、施設内だけでなく施設の外でも入所者と地域住民の交流が生まれています。
専門的なことはわかりません。でもこの施設内外での地域住民との交流が依存症の治療に一役買っているのだと思います。実際、レト・ホープの治療法は高い成果を上げていて、これまでに多くの依存症患者の自立を助けています。
【課題】地元の理解を得るまでに時間がかかるかもしれない
・地域住民が壊れた品を施設に持ち込み、依存症患者が修理、販売する
・依存症患者が地域住民の日常生活の手助けをする
→結果的に依存症患者も地域住民もみんなハッピーになる
レト・ホープのリサイクルを通じた治療法は本当に素晴らしい発想で、実際にうまくいっています。でも地域住民と依存症患者がお互いに助け合って生活する共同体のようになるまでにはそれなりの時間がかかっています。
- 依存症患者と関わりたくない
- 犯罪に巻き込まれるのではないか?
- 街の犯罪率が上がるのではないか?
これまで依存症と関わりを持っていない人たちは、依存症患者に対して多かれ少なかれ拒否感を持っています。人間は知らないものに対して恐怖心を感じる生き物なのでこの反応を避けて通ることはできません。なので、まずはこの拒否感を和らげて地元に受け入れてもらうところから始める必要があります。
実際、レト・ホープも12年前に施設を建てたときはかなり反対されました。その反対にめげずに真面目に働いた当時の依存症患者と施設職員の頑張りによって徐々に地元に理解され、現在では地元になくてはならない施設になっています。
もし日本版のレト・ホープを始めるなら、北マケドニアの本家レト・ホープと同じように地元の反対に耐えなければなりません。もしかすると北マケドニアよりも強い反発が生まれるかもしれません。その点が懸念されますが、この取り組みは本当に素晴らしいものだと思うので、ぜひ日本でもやってほしいと思っています。
もしかすると、数年後には自分が依存症になっているかもしれません。先のことはわかりませんから、お互い様の精神で常に助け合っていくことが、結果的に自分を助けることになるのかもしれませね。
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