【再審無罪】湖東病院の元看護助手に対する冤罪補償金が少なすぎる【刑事補償法or国家賠償法】

2020年4月1日日経新聞39面

2003年に滋賀県の湖東記念病院で治療を受けていた70代の患者が死亡しました。

そして元看護助手の西山美香さんが故意に患者の人工呼吸器を外し殺害したとされ、逮捕・起訴されました。

裁判では西山さんの自白が証拠となり、懲役12年が確定し、2017年8月に満期を迎えて出所しています。

取り調べ段階では自白があったものの、公判から一貫して無罪を主張し続けること約17年

ついに2020年3月31日に再審無罪判決が確定しました。

しかしすでに12年間の服役を終えています。

 

冤罪事件の被害者の方々は、国からどの程度の補償を受けることができるのでしょうか?

 

刑事補償法によって1日1000円〜12500円が支払われる

冤罪判決が出るとメディアなどが全国にその事実を流します。

今回の湖東病院事件でも全国紙が一斉に冤罪判決について記事を出しました。

2020年4月1日日経新聞39面

2020年4月1日日経新聞39面

 

しかし冤罪被害者本人が受けた肉体的・精神的な苦痛を完全に取り除くことはできません。

 

何より服役によって失った時間を取り戻すことができません。

 

今回の西山さんのケースでは30代という人生で最も活動的な時間を奪われました。

この事実に対して日本政府から補償金という形でお金が支払われます。

でも本当に少額です。

 

補償金は刑事補償法によって「1日1000円〜12500円」と定められているからです。

 

最高額の12500円であったとしても、24時間換算すると時給521円です。

全国で最も安い最低時給は790円なので、それ以下ですね。

家族と旅行に行ったり、恋人とデートしたり、、、そういうことが一切できなかった期間に対する補償が時給521円は低すぎるでしょう(泣)

西山さんは12年間服役していたので、単純に計算すると補償金が約5500万円になります。

 

このように補償金が少なすぎるのも問題ですが、もう一つ疑問なのが公務員への処分です。

冤罪を作り上げた警察や、それを見抜けなかった裁判官、国などは特に罪に問われないのです。

 

国家賠償法はほとんど適用されない

公務員の不法行為が認められると国家賠償法という法律が適用されます。

これは刑事補償法のような一日いくらではなく、被害者ごとに補償金を判断するルールです。

例えば、2009年の障害者郵便制度悪用事件では検察による証拠の改竄が見つかったため、国家賠償法が適用されました。

冤罪被害に元厚生労働省局長の村木厚子さんは休職中の給与(約3800万円)を受け取ったそうです。

もし刑事補償法によって補償金が計算されていれば、こんな大金にはならないはずです。

 

元看護助手の西山さんに自白を強要した警察官の不正が立証されれば、村木さんと同様に国家賠償法が適用されて本来であれば仕事を続けて得られたであろう利益(逸失利益)が補償されます。

看護助手の給与額は分かりませんが、間違いなく時給521円よりも高いはずです。

しかし残念なことに、警察による自白の強要は国家賠償法を適用する根拠にならないようです。

検察による証拠改竄と警察による自白の強要(証拠の捏造)に何の違いがあるのかは分かりませんが、現在の司法運用ではそのようになっています(泣)

 

冤罪被害を防ぐ方法は司法の原則「疑わしきは被告人の利益に」を守ること

司法制度の原則は「疑わしきは被告人の利益に」です。

つまり言い逃れできない確実な証拠がない場合以外は、基本的に無罪となります。

 

被害者の立場を考えると、目の前に犯人っぽい人がいても証拠がない限り刑務所に入れることができないということになり、納得できないでしょう。

でも加害者(と疑われている人)の立場を考えると、絶対にやっていない犯罪について疑われ、証拠もないのに刑務所に入れられてはたまったものではありません。

 

全国で発生している事件と裁判のうち、過半数は通常の事件であり、冤罪ではないと思います。

でも一定数冤罪が疑われる事件はあって、冤罪によって大事な人生を奪われる人がいます。

それをできる限り防ぐために「疑わしきは被告人の利益に」という原則が生まれたんだと思います。

でもその原則がちゃんと適用されていないから冤罪が生まれます。

 

冤罪事件の報道を見るたびに、司法制度の運用は難しいなあと考えさせられますね。

 

周登
最後まで読んでいただきありがとうございました。ではまた!

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