中国の工場が閉鎖されたのでトイレットペーパーが品薄になる 2020年2月に流れたデマ情報によって全国の店頭からトイレットペーパーが消えました。
メルカリなどのフリマアプリで高額転売され、かなり儲けた人もいるようですね。
でも実際のところ、トイレットペーパーはほぼ国産なので中国の工場閉鎖によって品薄になることはなく、完全なデマだったわけです。
そして日本社会を混乱に陥れたこのデマの発信者の一人が処罰されました(↓)
でもデマの発信者を処罰したところでデマはなくなりません。
なぜならデマの発信者はあくまで発信者でありデマの拡散者ではないからです。
今朝の日経新聞に「デマの発信者と拡散者の違い」についてまとめられた面白い記事があったので紹介しますね。
目次
SNS普及によって誰でも簡単に情報発信者になれる時代がきた
一昔前であれば情報発信者といえば、新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディアを指していました。
個人が情報を発信する手段がなかったし、発信しても多くの人の目に触れることがなかったからです。
しかしFacebookやTwitterなどのSNSの普及により、誰もが一瞬で情報発信者になれる時代が来ました。
別に何万人ものフォロワーを獲得する必要はありません。
たった数人のフォロワーがリツイートし、それを見た人がリツイートする。
これを繰り返すだけで、新型コロナウイルスの感染拡大のように爆発的に数が増えていきます。
実際、中国の工場閉鎖によって日本国内のトイレットペーパーが品薄になるというデマを流した人も、インフルエンサーと呼ばれる何十万人ものフォロワーを抱えている人ではありませんでした。
どこにでもいる一般人が何気なく呟いた一言が、社会全体を混乱に陥れる可能性を持つ時代になったということです。
いやー、本当にとんでもない時代になりましたね(泣)
善意の第三者がデマ拡散者になってデマ情報を拡散している
誰でも情報発信者になってデマを流せるということは、誰でもデマ情報の訂正ができるということでもあります。
トイレットペーパー品薄デマについても、本当に多くの人が情報の訂正を行いました。
例えば
- トイレットペーパーは国産だから品薄にならない
- 倉庫に大量の備蓄あります(写真付き)
- 日本政府の発表を引用
など、、、
しかし残念ながら、このような「善意の第三者によるデマ情報の訂正こそデマが拡散する最大の理由」なんです。
実はトイレットペーパー品薄デマの元ツイートはほとんどリツイートされていません。
僕だけでなく多くの人が元ツイートを見ていないはずです。
でもトイレットペーパーは品薄にならないというデマ否定ツイートはたくさん目にしました。
そしてそのデマ否定ツイートを目にした人が不安になって買い占めしたのです(↓)
デマの否定リツイートの増加とともにトイレットペーパーの購入額が一気に増加し、買い占めが起きていることがよくわかるグラフですよね。
トイレットペーパーを購入した人のうち9割近くが、品薄になるという情報はデマであることを知っていたという話もあります。
デマであると知っていても念のため買っておきたくなるのが人間です。
でも品薄になるというデマを知らなければ買いません。
つまりデマ拡散を防ぐ最も有効な手段は「デマを無視すること」なんです。
親切心からデマ情報の訂正をしたりデマの注意喚起をしたりすると、今回のトイレットペーパー騒動のようにデマであるとみんなが知っているのに買い占めが起きます。
デマを発信する人ではなくデマを訂正する人たちがデマを拡散してしまう
これはSNS社会のジレンマですね。
インフォデミック社会では情報の取捨選択がとても大事
それまで経験したことのないような事態や災害が起きると、必ずと言っていいほどデマが広がります。
中国の武漢の市場から広がったコロナウイルスは瞬く間に全世界に拡散しました。
人同士の接触によって拡散するウイルスが一瞬で世界中に広がったんですから、スマホを少し操作するだけで他の人に流せる情報が拡散しないわけがありません。
きっとウイルスよりも早く拡大します。
数え切れないほどの情報が毎日大量にやりとりされ、まさにウイルスのように広がり続ける現代社会では、正しい情報を選び、それ以外を捨てる技術が求められます。
正しくない情報を訂正するのではなく捨てる(=無視する)というのがポイントです。
日本人は親切すぎて、正しくない情報を見ると騙されてしまう誰かのために訂正したくなるんだと思います。
今回のコロナ騒動をきっかけに「正しく無視する技術」が普及するといいですね。